月経トラブル(漢)

▼駆お血薬
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)、桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)、通導散(ツウドウサン)、大黄牡丹皮湯(ダイオウボタンピトウ)、加味逍遙散(カミショウヨウサン)漢方では月経トラブルを“お血”(おけつ)という概念でとらえます。“お血”とは、血流の停滞(うっ血、腫れ)とみることができ、出血にもつながるものです。また、腹症においては下腹部の抵抗・圧痛を主要目安とします。生理痛や生理不順、過多月経などの月経トラブルには、この”お血”を改善する「駆お血薬」が処方されるものです。桂枝茯苓丸は、体力が中くらいの人を中心に広く使われています。桃核承気湯と通導散、大黄牡丹皮湯は、便秘がちで体力のある熱・実証タイプ向けです。加味逍遙散は、頭痛や肩こり、のぼせ、足の冷え、不眠など不定愁訴の多い女性に好んで用いられます。

▼補血薬
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)、四物湯(シモツトウ)、温経湯(ウンケイトウ)、温清飲(ウンセイイン)、きゅう帰膠艾湯(キュウキキョウガイトウ)、十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)“お血”のほか“血虚”(けっきょ)という考え方もあります。これは血液不足による体調不良で、顔色が蒼白いなどある種の貧血症状とみなせます。この場合、生理が遅れたり少なくなることが多く、ときに無月経・無排卵となり不妊の原因にもなりかねません。このような“血虚”の状態には、「補血薬」の部類が適当です。当帰芍薬散は女性の聖薬ともいわれ、色白で冷え症、やせ型で体力のない人の生理痛や生理不順に最適です。四物湯と温経湯は、皮膚や唇がカサカサ乾燥しやすいなど燥証を目安に用います。きゅう帰膠艾湯は多少使用目標が異なり、過多月経を含め出血にともなう貧血症状に用いることが多いです。

▼その他
芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)、防已黄耆湯(ボウイオエギトウ)、五積散(ゴシャクサン)、当帰建中湯(トウキケンチュウトウ)、女神散(ニョシンサン)、きゅう帰調血飲(キュウキチョウケツイン)、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)、黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)、三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)、大柴胡湯(ダイサイコトウ)、柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)など芍薬甘草湯は、証にかかわらず生理痛の緩和目的に広く処方されます。五積散は体のあちこちが冷えて痛むときに、当帰建中湯は疲れやすく貧血ぎみな女性の生理痛に適します。防已黄耆湯は、汗かきで水ぶとりタイプ、冷え性で月経が少な目の人にもってつけでしょう。また、気分の落ち込みなど精神的な不調がみられる場合には、女神散や半夏厚朴湯も使われます。ほかに、熱・実証者の過多月経に黄連解毒湯や三黄瀉心湯を、熱証で胸脇苦満(きょうきょうくまん)があれば大柴胡湯や柴胡桂枝湯なども用います。