▼表証向け方剤
越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)、白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)、十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)、葛根湯(カッコントウ)、香蘇散(コウソサン)急性のじん麻疹は皮膚が水ぶくれ状態になりますので、その多くは表証で湿証にあたります。これを改善するのは、発散性の燥性の方剤です。さらに、熱証には熱をさます涼性の方剤を、寒証には体をあたためる温性の方剤を使い分けるようにします。熱証かどうかは、体全体の様子とともにじん麻疹の状態で判断します。丘湿が赤く熱をおびていれば熱証、そうでないのなら寒証とみなす要素です。越婢加朮湯は熱証で体力が中くらい以上の人の急なじん麻疹に最適です。もしも、丘湿が小さく湿証の所見がなければ、口が渇くことを使用目標に白虎加人参湯の処方も考慮してよいでしょう。一方、寒証に向くのが十味敗毒湯です。この方剤はそれほど証にこだわらず、じん麻疹を含めいろいろな皮膚病に広く処方されています。そのほか、悪寒や肩こり、ふしぶしの痛みなどがあれば葛根湯を、また魚中毒によるじん麻疹には香蘇散を用いるとよいようです。
▼裏証向け方剤
消風散(ショウフウサン)、茵ちん五苓散(インチンゴレイサン)5200073、十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)、小柴胡湯(ショウサイコトウ)、大柴胡湯(ダイサイコトウ)、防風通聖散(ボウフウツウショウサン)、桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)、桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)、茵ちん蒿湯(インチンコウトウ)体の表面に生じる一過性のじん麻疹は、基本的に表証です。けれど、慢性に推移する場合、体内の病因も深くかかわるので、より裏証の側面を持ちます。この場合、体質を改善する方剤が重要となってきます。消風散は、熱証で中間証以上に用いる方剤で、とくに熱感やカユミが強いときに適します。茵ちん五苓散は、体力が中くらいの人で、口が渇き尿量が少ないことを目安に用いるとよいでしょう。寒証では、急性期に引き続き十味敗毒湯もよく使われます。そのほか、体質改善を目的に、胸脇苦満があれば小柴胡湯や大柴胡湯を、太鼓腹で肥満ぎみの人には防風通聖散を、また月経トラブルや“お血”の所見があれば、駆お血薬の桃核承気湯や桂枝茯苓丸なども処方されます。これらと、肝臓の働きを助ける茵ちん蒿湯との併用も考えられます。