漢方薬の有効性と安全性は、数千年におよぶ歴史的スクリーニングからみいだされました。
平たくいうと、「この人の症状(証)に、この生薬を組み合わせたら、よく効いた」とか「あの人の症状(証)に、あの生薬を組み合わせたら、かえって悪化した」といった長年の臨床経験の積み重ねによるものです。
漢方医学とは、そのような経験をもとに「証」と「方剤」の関係を理論的に体系化したものです。
そこで使われる漢方薬も、基本的に経験にもとづく薬です。
ですから、必ずしも科学的に有効性が確かめられているわけではありません。
そして、漢方薬にも得意不得意があります。
一般的にいって、漢方薬の効果はゆるやかです。
鎮痛薬のように今起きている痛みを確実に止めるとことは不得意ですし、血圧を十分に下げたり、病原菌を退治することもできません。
それでは、どのような病気に向くのでしょう。
第一に、器質的な異常を伴わない「機能異常」があげられます。
たとえば、機能性胃腸症(慢性胃炎)による食欲不振や吐き気、便秘や下痢、肩こり、生理不順、冷え性などです。
第二は、アトピー、喘息、鼻炎などのアレルギー性の病気です。
さらに免疫系がかかわる肝炎、ネフローゼ、リウマチなどに対して補助的に用いることもできます。
漢方薬は決して万能な薬ではありません。
西洋薬が絶対に必要となるケースも多いものです。緩和医療のひとつの選択肢と考えるべきでしょう。