漢方薬に使われる生薬の化学的な分析もおこなわれています。
たとえば、葛根湯(カッコントウ)や小青竜湯(ショウセイリュウトウ)に含まれる麻黄(マオウ)という生薬には、交感神経刺激薬のエフェドリン系の有効成分が含まれます。
エフェドリン系の薬は、西洋医学でも咳や鼻炎の治療薬として使われており、効能的にもぴったり一致します。
漢方薬の有効性を示す証拠といえるでしょう。
一方で、エフェドリンとしての効果だけでなく、その副作用や飲み合わせにも注意が必要なわけです。便秘によく使われる承気湯(ジョウキトウ)の例もあげましょう。
大黄(ダイオウ)や芒硝(ボウショウ)を含む方剤の仲間です。
大黄は中国原産の薬用植物で、アントラキノン系の大腸刺激性の下剤成分を含んでいます。
もう一つの芒硝は天然の塩類下剤といえます。
いわゆる芒硝泉の温泉に含まれる成分と同じで、化学的には硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムを含有します。
これらの有効成分は、西洋医学的にも下剤として用いるものです。
ある意味、効果があるのは当然で、なんの不思議もないのです。と同時に、一般的な下剤にみられる腹痛や下痢、長期服用時の耐性や電解質異常などの副作用も起こりうることを意味します。
このように、いくつかの漢方薬では、その有効成分と薬理作用が解明されています。
ただし、そこから推測される効果は、なんら西洋医学的、対症療法的な効果とかわりません。
漢方薬がもつとされる体質改善的な効果、他の生薬の配合意義、証との関係を証明することにはなりません。