気血水

「気血水(きけつすい)」の3つの考え方も、証をみるうえで欠かせません。

1番目の“気”は、「病は気から」の気に通じるものです。
気は、形をもちませんが、体の調子にもかかわっています。
たとえば、イライラやのぼせ、不安や緊張は気の上昇(上衝)と考えられ、そのような状態が続けば胃腸の調子が悪くなったり、血圧が上がってしまうこともあります。
逆に気の下降、あるいは不足や停滞は抑うつを招き、やはり体調をくずしかねません。
西洋医学でいう心身症や仮面うつ病は、気の異常から生じる病気ととらえることができます。
気に働く代表的な方剤に、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)や柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)、酸棗仁湯(サンソウニントウ)などがあります。

2番目の“血”は、広い意味での血流にあたります。
さらに漢方では、血流の異常を”お血”(おけつ)および“血虚”(けっきょ)という概念でとらえます。
”お血”は血流停滞(うっ血)、“血虚”は血流不足(貧血)とみなせます。
女性の月経トラブルやいやゆる「血の道症」には、そのような”お血”を取り去る「駆お血薬」や、“血虚”を改善する「補血薬」が使われるものです。
前者の代表例として桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)や桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)、後者には当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)や四物湯(シモツトウ)などがあります。

3番目の“水”は、体内の水分のことです。
漢方では、水分循環の異常を広く“水毒”(すいどく)といい、また水分の過剰を“湿証”(しっしょう)ともいいます。
具体的な症状としては、むくみ、嘔吐、下痢、痰、鼻水、喘息、めまい、関節痛などです。湿証を改善する方剤には、五苓散(ゴレイサン)、小青竜湯(ショウセイリュウトウ)、半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジツテンマトウ)、猪苓湯(チョレイトウ)などがあります。
いずれも水分を抜く燥性の方剤です。

健康な状態では、気血水が過不足なく、また停滞することなく体をめぐっています。
そうでないのなら、その状態を改善する方剤を用いて、正常化するようにします。これが、漢方の「気血水」の理論です。